k3の駄文録

テキトーに書いています。

今回の地震で川内原発を止めたほうがいいという考え

私にはあれこれ理由をつけて原発の運転継続を正当化しようとしているほうがどうかしているように思える。彼らは止めたほうがいいという考えが全く理解できないのだそうだ。福島で何が起きていたのか、もう忘れたのかと。動かし続けるべきだと言うほうがよほど理解に苦しむ。

理由1 原発は急には冷やせない

原発は基準地震動を超える揺れを感知したら自動的に止まる。今、川内原発ではたいして揺れていないのだから止める理由がない。」

この主張はすでに起きた地震については成立するが、この地震川内原発近くの断層の地震を誘発する可能性について全く無視している。

福島の原発では自動的に止まったものの、その後全電源を喪失してメルトダウン・爆発に至った。メルトダウンした大きな原因の一つは、原発を停止後、冷却を一旦停止していた時に全電源が失われたことにある。

制御棒を挿入した後、冷却速度が速すぎると炉が傷む。崩壊熱を除去しないとメルトダウンするのだから、冷やすのを止めるのは理論上はよくないのだが、工学的な理由で時々冷却をやめなければならない。この現実が悪いほうに作用したのが福島の事故だ。

原子炉が緊急停止してから冷やしっぱなしにしても大丈夫になるまでの半日から1日は、全く安心できないのが原発だということを僕らは福島の事故から学んだはずだ。先に停止しておけば、地震が来ても津波が来ても余裕をもって対処できる。今地震によって九州は不安定な状態にある。条件が悪ければ福島と同じ災害が起きるというばくちを打つ必要はない。

理由2 今回の地震が既に想定外のことだらけ

最初の地震に誘発された大きな地震が、3か所の異なる断層で発生している。観測史上初の現象だという。これが川内原発の近くを通る断層での地震を誘発する心配はない、とは言えない。川内原発近くの断層は海底を通っているため、津波の心配もある。もっとも、福島の原発とは異なり13mの高台にあるため津波には強いが、津波の遡上高が13mを超える可能性も0ではないし、そのような津波に対する備えは十分とは言えない。

なにより、川内原発の場合、津波よりも揺れのほうに不安が大きい。今回の地震ではすでに基準地震動の2倍を超える1500ガルを超える加速度を記録していて、620ガルまでしか想定していない川内原発が、地震の揺れに耐えられる保証がない。川内原発福島原発並みの事故が発生するとすれば、その原因は津波ではなく地震の揺れによるものになるだろう。

理由3 避難計画の前提が崩壊している

今回のような震災では交通網などに深刻なダメージが発生し、住民の移動は著しく困難になることが明らかになった。今現在も困難な状態である。リスクが高い今、原発事故時に周辺住民に大量被ばくが必至である以上、あらかじめ原発を止めて冷やしておき、リスクを下げておくことは合理的な判断といえるだろう。


他に、「九州の系統は細いのだから、川内原発を止めたら電力供給がままならなくなる」との噴飯物の主張もなされている。それなら再稼働まで止まっていた時期、電力供給は頻繁に止まっているはずだが、そんなことはなかった。

さらには「九州には半導体工場が多く、安定した電源が必要だ。火力の不安定な電源では影響が大きいだろう」という失笑せざるを得ない主張もある。ここでいう安定した電源とは電圧変動が小さいことを指す。それを調整しているのは出力調整のできない原発ではなく、水力や火力発電である。原発がベースロードを担うことで火力の発電幅に余裕ができるという面は確かにあるが、真冬ならとまだしも、電力需要の小さい今の季節にその主張をするのは無理筋というものだ。

物理系の学者ですら「川内原発は動かし続けて問題ない」という人たちがいるのだが、彼らはすでに起きた地震動のことしか考えていない。物理学者は現実からいろんな条件を無視して単純化し、最低限の原理を見出そうとする習慣があるわけだが、これが悪いほうに出ているといえる。一言で言えば視野が狭いのである。

川内原発を止めるべきと考える人たちはすぐそばで観測例のない災害が発生しているのだから、これからこの周辺でどんな「想定外」が起きるのか分からない状態であると考えている。だからこそせめて今回の震災が落ち着くまでは念のために止めたほうがいいと考えている。どちらがより広範で俯瞰的に物事を見て、合理的に判断しているのかは論じるまでもないだろう。