k3の駄文録

テキトーに書いています。

機械生成の絵がどうたらこうたら

人間のイラストレーターが不要になるみたいな暴論がまたぞろ出ているのだけど。

 

機械学習って結局過去に人間のクリエイターが作ったものをベースにしているので、言うなれば「手の込んだコピー」。

 

まあそれ言うと人間のクリエイターも先人の絵から影響を受け学んでうんたらかんたらで作っているので「手の込んだコピー」って論点からは同じって言われる。

 

もっとも、現時点では絵に魂が…っていうか作者のメッセージとかが盛り込まれてないじゃん? ってのは成立する。まあ、現時点では。

 

原理的には検索エンジンみたいなもので、特定キーワードに合致する学習データをもとに合成しているだけなので。

 

将来は生成プログラムにそういう意味的、メッセージ的なキーワードを盛り込んで学習させればその問題もまた解消されるのだろう。

 

また、絵に関しては、「人間が勝手に意味付けしてくれる」という抜け道がある。「これはAIに生成させました」というテキストなしには、おそらく多くの人が勝手に意味付けをして納得し、称賛してしまうだろう。

 

「そもそも、意味とは何か」みたいな哲学的な考察まで要求される。

 

それはそれとして、AIによって生成されるのは「従来の絵の平均値で生成された絵」であることは間違いない。大体どれも同じような味付けの絵になる。

 

人間の場合は、「意図的に平均から外してメッセージを入れる」みたいな芸当ができるが、これは機械学習には困難な分野だろう。

 

というのも、適切な学習データを集めることが、おそらく原理的にできないから。

そういう尖った作風のものを集めると、ただのカオスが生成されるはず。

 

尖らせたうえでカオスでもない”尖った絵”をAIに生成させようとするとどうなるか。おそらく、誰か特定の人のクリエイターの劣化コピーしか作れない。

 

結局これが、AI(機械学習)の創作物の限界、枠となる。そこからはみ出すことは、AIにはできない。これは断言できる。

なぜなら、AIは他の絵を「学習」して生成するが、人間が作る絵は、他の絵を学習しただけの結果ではなく、その人の人生、経験、感情などもひっくるめて生成されるものだから。枠を超える道を、生身の人間は持っている。

 

AIがそのレベルに達するには、AIに感情のモデルを与え、経験を創作物に変換するための仕組みが必要になる。

 

人間が人間のことをまだ理解できていないというのに、それをAIのモデルに反映させることはできない。AIを「第2の知的生命」とするには人間は自分のことを知らなすぎる。

 

問題となるのは、商業デザイナーのように、「平均的な絵」が求められる分野。

 

従来のデザイナー・イラストレーターにとって、これは明らかに外部からもたらされた「脅威」となる。多くのデザイナーが経験するように、レベルの低いクライアントにとっては「AIでもいい」となってしまう。

 

そこに発生するのは、AI画家によさげなイラストを描かせるオペレーター職。イラストレーターの市場に、全くの異分野から新規参入が発生し、競争の激化、低価格化競争が発生する。

 

ここで、既存のイラストレーターもAIオペレーターとしての技能を身に付け、「レベルの低い」クライアントにはAI生成の絵を渡せばよい、という判断もあり得るだろう。

 

ただ、そう簡単に行かないのは、既存のイラストレーターにとっては、AIオペレーターの作業はただの苦痛でしかないことだ。

能力がある人ほど、AI絵の粗が目につき、修正したくなるだろう。また、イメージと違うものばかりが出力されてストレスがたまるに違いない。

 

おそらく、審美眼の無い人間、あるいは無責任/不誠実な人間ほど、考えなしに生成されたものを提出できてしまう。

 

低価格市場はAIオペレーターに席巻され、生き残れるのは、現時点で図抜けた能力や人気を持つイラストレーターに限られる。その人たちは高価格市場で安泰となるだろう。

 

ただ、そのあとが続かない。経験の浅いイラストレーターはAIオペレーターに駆逐され、育たない。高価格市場に上がれる人間は、一部の天才、またはほかの分野で人気を得た者だけに限られることになる。

 

高価格市場はデザインからアートに変質するだろうし、低価格市場ではどれもこれも「平均的」なもので埋め尽くされる。

消費者の感性もそれに慣らされ、いずれ「平均」から外れた絵は気持ち悪いと思われ、バッシングされるようになるかもしれない。

逆に、「平均的」なものに食傷気味になり、バックラッシュが起きるかもしれない。

その時が、人間のイラストレーターが浮上するチャンスになるだろう。

 

いずれにせよ、イラスト・デザインの市場は荒れるだろうし、その間の食い扶持をどうするか、厳しい時代がやってくるように思う。